タグチメソッド用語集
タグチメソッド
 タグチメソッドは故・田口玄一博士が考案した画期的な考え方です。
 積極的な管理をして品質を安定させる考え方ではなく,頑健性(ロバストネス)を高めることでコストダウンすることが,タグチメソッドの考え方です。
 比較的短期間に飛躍的な成果を実現することのできる方法で,設計や製造生産技術のための方法である「オフラインQE」と,製造管理の効率化を行うための「オンラインQE」,パターン認識の方法である「MTシステム」があります。
損失関数
 特性値と社会的損失金額の関係を表す関数で,社会的損失金額は,特性値の目標値からのズレの2乗に比例するというのが損失関数です。
 タグチメソッドでは品質を「製品が出荷後に社会に与える損失」と定義しています。
 損失を金額で表すことで,品質とコストのバランスを取る際に解りやすい指標です。
 損失関数により求められる損失は,ユーザーの視点に合致した指標と言えます。
オンラインQE
生産システムの運用と管理を行うタグチメソッドです。
工程や製品の管理・保守,メンテナンス,アフターサービス,計測器の管理などが最適化できます。
機能限界(値)
市場において製品の半数が機能しなくなる,特性の限界の値で、損失関数を求めるために必要な値です。
オフラインQE
技術システムの開発・設計を対象とするタグチメソッド(品質工学)です。
研究・開発,製品設計,工程設計などにおいて,システムの構成,設計定数および許容差などの最適値を求める方法です。
機能性評価
 技術システムの働きが,働きを乱す要因(誤差因子)によってどの程度変動するのかをSN比によって評価する方法で,機能のバラツキの大きさや寿命の予測,他社製品とのベンチマークなどを行う事が出来ます。
 ユーザー目線の評価が可能で,パラメータ設計にも応用されています。
機能
技術システムのもつ働きです。
機能性
技術システムの機能のバラツキの程度です。
標準条件と誤差因子を設定した条件での機能の変動で、SN比により定量的に現されます。
基本機能
技術システムにおいて、開発・設計者の求める機能を実現するための基本的な働きで,物理法則などの自然の原理である場合が多くあります。
SN比
技術システムの出力の大きさとバラツキの大きさの比率です。
動特性の場合は,特性値の変動のうち,信号の効果の大きさと,望ましくない要因の効果の大きさとの比で、
静特性(望目特性)の場合は信号は無いので,望ましくない要因の効果σの逆数となります。
特に、負にならず小さい方が良い場合を望小特性と呼び,バラツキの大きさσはΣ{(y)/n}となります。
また,強度のように負にならず大きい方が良い場合を望大特性と呼び,バラツキの大きさσはΣ{(1/y)/n}となります。
誤差因子
製造者および使用者が製品の使用時に管理できない要因で、特性値を変動させる因子です。
信号因子
動特性の入出力で入力側に選ばれた因子です。
パラメータ設計
 タグチメソッドの中では最も普及している手法です。誤差因子に対して効率的(短期間・低コスト)に,市場でのトラブルが出にくいロバストな技術を開発する最適化の方法です。
 広く応用が可能で,技術開発,商品開発・設計,工程条件最適化,ソフトウェアのバグ検出など,さまざまな最適化を効率的に行う事が出来ます。
 多くの場合直交表を使った実験を行います。
 要因効果から設計パラメータの最適値を推定し、確認実験で再現性を確認します。
 機能のバラツキを先に改善し、安定化させた後で目標値への合わせ込みを行う、2段階設計が特徴です。
直交表
任意の2つの因子の水準の組合せが同数現れるような割り付けを定めた表です。
2水準系,3水準系などのほか,L12,L18,L36などの混合型直交表があり,タグチメソッドでは混合型直交表の使用を推奨されています。
品質特性
音・振動・発熱・摩耗などの弊害項目や、不良率などのことを言います。
ロバストネス
使用者が管理しない要因(誤差因子)が変化したときの,機能のバラツキの程度を言います。
対象となる技術の頑健性のことです。
2段階設計
第1段階では誤差因子によるばらつきを最小にし,第2段階で出力の大きさを目標値に調整することによって,設計パラメータの最適水準を決める方法です。
交互作用
1つの因子の効果が,他の因子の水準によって影響される効果で,主効果以外の効果のことを言います。
要因効果
特性値に対する,因子の水準による効果のことで、要因効果を図示したものを要因効果図と言います。
許容差
製品や部品のバラツキの管理値を言います。
許容差設計
品質とコストがバランスし,損失が最少となるように許容差を決める方法で、パラメータ設計により最適化したあとに行います。パラメータ設計による品質改善の成果をコストに還元する方法です。
MTシステム
 予測・診断・識別などをパターン認識により行う方法です。単位空間というパターンの基準となる状態を設定し,対象物のパターンが,単位空間からどの程度離れているかを数値(距離)で表します。
 基になっているのはインドの統計学者マハラノビスの考え出した「マハラノビスの距離」ですが、新しいMTシステムで求められる距離は「マハラノビスの距離」ではなく、田口玄一博士独自のものとなっています。
 他のパターン認識技術に比べ、計算速度が速く、簡単に実施できる方法で、より多くのデータ項目を扱うことが可能です。
パターン認識
対象となる”もの”や”こと”が,どのパターンに当てはまるか識別を行うこと。
単位空間
MTシステムにおいて評価の基準となるデータのパターンです。
対象データ
単位空間に属さないデータのことです。 信号データとも言います。
距離
単位空間の中心からの離れ具合を表す指標で,MT法ではMD(マハラノビス距離),それ以降のMTシステムではD(距離)を用います。